”あ、叔父さん来たわ”
”今回はちょっとおとなしいノリモノだな”。

神奈川の親戚の叔父さんとは長い付き合いだ。
子供の時は、お盆帰省でたまに顔を合わせる程度だったが、
山梨の大学に来てからは釣りのついでにな、とか、ゴルフの
帰りでな、など理由をかこつけては来てくれていた。
暑い夏だった。
亡くなる1週間前、病院の外で小1時間楽しく過ごせたことが救いだった。
その頃から、叔母さんはフシギなことを言い始める。
”あ、お父さん来たよ”。
墓参りした帰りだった。叔母さんの家で故人を偲びながら
お酒を飲んでいると網戸にオニヤンマが。
普通なら叔母さんを心配する場面だが、私も思わず言ってしまう。
”相変わらず派手なノリモノだよね”。
そう、こんなことが1度や2度ではないのだ。
年に2回くらい叔母さんのところには行くのだが、
そろそろ行こうかなと思っていると珍しい虫が現れる。
毎年、毎回。
去年はビル内にあるSACの入り口にオニヤンマが止まってた。
今年はどうやらエコに切り替えたらしい。シオカラトンボだ。
しかも日本固有の亜種、シオヤトンボだ。

10分くらいじーっと店内を見ている。
”おまえ~、そろそろ参りにコイや~”と言わんばかり。
”おっちゃん、今回はシオカラだけにしょっぱいノリモノだな”
と返しておいた。
今年も7月に墓参りに行く。
私はこの時期いつも思い出す、あの温かい眼差し。
そして一生思い出し続けるのでしょうね。
だから一生誰かに温かい眼差しを向けられるのでしょうね。
有り難い話だ。