小学生3~4年の頃からあまり外で遊ばなくなった。
友達と遊んでいた記憶はあるが、段々と1人で
過ごすようになっていった。親はいじめを気にしていたが
何のことはない、本にハマっていた。
一番ハマった本は日本の民話全26巻(未来社)。
漢字は新聞のように出てくるわ、旧仮名遣いの表記やら
旧字体まで出てくる。読めない字、意味が分からない言葉
などオンパレード。逐一父に問いながら読んでいた。
話が面白いのだ。ホトトギスがなぜホウチョウカケタカと
鳴くのか、百舌鳥はなぜ早贄をするのかなど地方に伝わる
話が満載だ。しかも一つの話が短い。小学校低学年の
教科書並みなのだ。難しい漢字も意味さえ分かれば
物語は楽しめた。そのうち父は面倒くさがり、
三種の神器、漢和辞典・国語辞典・広辞苑を渡してきた。
最初はうへ~と思ったが使い方がわかると重宝した。
漢字の持つ意味や成り立ちがまた物語のように
面白く感じていた。
というわけで、漢字好きになった。
だから難読文字や変わった名字には食いついてしまう。
自分の姓名も全国100件以内の珍しい名前なので
ことさら調べてしまう。
薬袋、松七五三、四月一日、小鳥遊は名字。
(みない、まつしめ、わたぬき、たかなし)と読む。
どの地方に多いのかなどつい、お客様に聞いてしまう。
珍しい名字のお客様自身も興味をもって調べているので
意外に詳しく教えてもらえる。
名字だけでなく、名前も気になる。
名前には親の希望や期待、夢、愛情など盛りだくさんだ。
誰でも自分の名前の由来は知りだがる。
私も小学生の時に聞いた。
”卓弥(たくや)”は卓上の卓。ごはんにいつでも
ありつけるようにとのこと。
からかうような説明に納得できず、三種の神器を
もって調べてみる。
”卓”=優れている、”弥”=あまねく、広い世界、宇宙
・・・名前負けじゃね。
お客様の名前で変わった漢字をあてた方がいる。
キラキラネームではない。むしろ逆かも。
”由味子”(ゆみこ)さんだ。由美子、弓子はよく見かけるが
”味”を使っているところが珍しい。思わず聞いてしまった。
最初は由美子だったのだが、小さい頃から病気ばかりで
両親は気が気でない。どうやら字画が悪いという話で
由味子に変えたそうだ。
なぜ病気ばかりするのか、元気に生きてさえくれればいい、
ワラにもすがる真摯な親の思いが深々と伝わってくる。
”かんじがいい名前ですね”と言ったら
”私も気に入ってるの”と返ってきた。
向かいに座っていたご友人は
”まさに味のある名前でしょ!”と
得意顔で決め台詞を放った。
かんじがいいだけでなく、おちついたいい名前の話。