ブドウ液と床下の思い

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夏のカクテルだけでなく、四季を通じて原料としている

山梨のブドウ液。せめて”ブドウジュース”と言えば

聞こえがいい感じがする。しかし、その呼び名が

ブドウとの付き合いが長い山梨らしい。

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基本は一升瓶。

ブドウ作りは江戸時代から、ワインづくりは明治から。

ブドウジュースは葡萄液、ワインは葡萄酒と呼ぶ。

私が山梨のレストランで働いていた頃、80歳くらいの

御老人が来店したことがある。赤ワインを1杯頼んで、

”赤紙が届いてなあ、なんとも言えん気持ちだった。

招集日前夜にな、親父が畳上げて床下から葡萄酒の入った

一升瓶を取り出してな、新聞紙丸めた栓抜いて、コップに

注いでくれた。” しばらく間が空いて、また話す。

”山梨のワインは一升瓶だよ。初めはびっくりしただろ。

みんな畑からとったワインをまあ、いわば密造してな、

床下に入れてたんだよ。” さっきまでの空気を隠すような

話しっぷりに私は相槌を打つだけだった。

床下の思いは聞くべきだったのか。

あの時の沈黙は今も自分に語っている。