初夏の夕暮れ


朝から雨だ。

普段ならちょっと憂鬱な気持ちになるものだが、

梅雨宣言があってから、やっときちんと降った雨。

黄色のカッパに身を包んで自転車通勤。

紫陽花が主役のように咲き誇る中、百合が咲いていた。

そして、甘い匂い・・・。

・・・高校生の時も自転車通学だった。距離9㎞はあったと思う。

行きは汗だく、帰りはくたくた。しかも自宅の私道が全行程中、

一番きつい上り坂。

Hisilicon K3

下の海沿いの公道が見えない。

いつもなら力づくの立ち漕ぎで登るのだが、

この日は学校行事もあり、気力がなかった。

初夏の夕暮れの中、這いずるように自転車を押した。

・・・甘い匂い。視線を向けると白い百合。

坂道の途中で、雑草と紛れながら咲いている。

その甘い匂いに、なぜか優しさを感じた。

”もう少しだ”

背筋を伸ばして、両腕に力を入れる。

今思い出しても、なぜこの情景を思い浮かべるのか

分からない。あの頃の未分化な思いが交錯する

初夏の夕暮れ。

紫陽花の脇に佇む百合は、雨空を見上げて咲いていた。