ほんのり温かいスモークサーモン

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山梨のフレンチに入りたての頃、

海育ちの私はフレンチの魚料理にギモンがあった。

バターにクリーム、強い香草・・・真鯛も平目も関係ないんじゃない?

そして素直においしいと言えない自分。

シェフが新しいメニューとして出してきた料理が

”ソーモン・ティエド(Saumon tiede)”。

ソーモン・ミキュイともいう。

ほんのり温かいサーモンだ。

当店では冷燻しているが調理法は同じ。

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試食を出されたとき、驚いた。

今まで味わったことのないふんわりとした食感、脂ののった独特の風味、

肉汁ならぬ魚汁ともいうべきしっとり感。どれもが新鮮だった。

サーモンと言っても所詮サケでしょ、と高をくくっていたのは事実だが、

衝撃だった。”フレンチの魚料理、侮りがたし!”(失敬)

この料理が自分の中にある、フレンチの魚料理を変えてくれた。

そしてこの料理の優れている点がもう一つある。

皮も骨もなく、柔らかいので子供でもご年配の方でも

気兼ねすることなく食べられること。箸でもいいのだ。

当店で出している”ほんのり温かいスモークサーモン”には

小さな歴史が刻まれている。それはお客様の歴史。

娘夫婦と孫娘2人を連れて来店してくださるお客様がいる。

初めて来店したのは2012年。2人の姉妹は5歳と2歳。

妹は3歳になるかならないかだった。

コースは食べきれないのでメインは

”ほんのり温かいスモークサーモン”を一切れずつ半分こ。

それに本日のスープをカップで半分こ。

分量的に大丈夫だと思っていたら、パンにハマって

結局残していた2人。

1年も経つと完食は当たり前。付き合わせの魚卵にハマったり、

サワークリームにハマったりと道草する。

2年も経つともう半分こでは足りない。まるまる一皿だ。

スープも食べ応えのある、オニオングラタンスープへ。

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この頃にはお姉ちゃんは漢字をちらほら書いてた。

妹が書けないから妹の名前、漢字で書いてあげてたな。

そしてまた月日が経って、気が付いたらもう小学生だ。

今ではおじいちゃんのサーモンにまで手を出している。

おじいちゃんは嬉しそう。

いつかはサーモンを卒業して、コースになるのだろう。

ほんのり温かいサーモンの話。